2月末にはじめて歩いた葛城古道。後半、カメラのバッテリー切れを起こすという失態を演じてしまったわたし。
前回歩いたときの感動や「撮影したい!」という気持ちがあふれているいるうちにもう一度行きたい、と思っていたので、なんと翌週行ってきました。
しかも当日はかなりの悪天候。雨風の強い春の嵐の中でした。天気予報では奈良県北部全てに雨マークが出ていました。が、前線が通過すれば天気は回復に向かう、という予報だったので、「いけるかな」と思い、出かけたのです。
葛城古道【リベンジ編】お届けします!
Contents
葛城古道【リベンジ編】スケジュール
午前中は仕事、午後から葛城古道、という強行スケジュールです。九品寺(くほんじ)境内と千体石仏、そして六地蔵石仏の写真を撮るのが目的です。
【スタート】近鉄御所(きんてつごせ)駅:
13:30発コミュニティバス「ひまわり号」乗車
↓ バス:7分
13:37着「櫛羅南(くじらみなみ)」バス停下車
↓ 歩き:3分
六地蔵石仏
↓ 歩き:30分
九品寺
↓ 歩き:30分
【ゴール】近鉄御所駅:15時頃到着
御所駅から【 口 】の字のようなコースでくるりと回って来る予定です。
バスに乗り遅れてスタートからつまづく
予定では午後1時30分・近鉄御所駅発のコミュニティバス「ひまわり号」を利用して六地蔵石仏近くまで行き、そこから九品寺まで歩いていくつもりでした。
帰りは九品寺から御所駅まで歩いて30分、2時間あれば十分、と見ていました。
ところが、午前中の仕事が 長引き、予定の電車に乗れず。御所駅に着いた時には六地蔵石仏行きのバスは出たあとでした。
スタートからいきなりつまずいてしまいました。
雨がしきりに降る中、撮影行を決意
六地蔵石仏方面行きのバスは1時間後、しかも遠回りのコースしかありません。
「今日はやめて帰ろうかな」と一瞬思ったのですが、せっかく来たし、雨の石仏の写真を撮りたい気持ちが強く、「行こう」と決意。
「御所駅で1時間待つよりも歩いたほうが早い。」そう思って、レインコートに傘、通勤バッグを肩から下げ、雨の中、歩き出しました。
雨は少し強くなり、斜めに降っています。傘をさしても足元は確実に濡れていきます。
御所駅周辺ではまだ人も歩いていましたが、駅から遠ざかるに連れ、通りは人気なく静まり返っていて、雨の音だけがしていました。
六地蔵石仏まで30分。途中、出会ったのは、買い物帰りの女性1人だけ。車も2台のみ。まったく人気のない住宅地をひとり、葛城山を目指して、西に登っていきます。
眼の前に広がる葛城山の緑は雨に濡れて深く、谷には白い雨雲が綿菓子のようにまといついています。雨は厳しかったですが、「この景色もまた美しいものだなあ」と開き直りました。
鴨山口神社
30分歩いて「鴨山口神社」に着きました。
雨がさらに降ってきました。が、鳥居や神社の屋根が雨であらわれ、くっきりと美しいです。
雨にあらわれた六地蔵石仏
鴨山口神社から、歩いて10分ほどで六地蔵石仏に到着。
お地蔵様は葛城山の方を向いているので、ふもとから登ってくると、わかりにくいかもしれません。
雨にあらわれ、六地蔵の姿がくっきりと見えます。
先週来たときにはほこりっぽかった石の肌も、雨に濡れてしっとり冷たく、陰影深く感じられます。
こんな大きな石がどうやってここに置かれたのか、はっきりしたことはわからないそう。ただ、この辺りは葛城山麓の扇状地であり、洪水などで葛城山の岩が流されてきたのではないか、と推測されています。(※諸説あり)
土砂降りの雨・しばし雨宿り
近鉄御所駅から歩き始めてここまで1時間。ここから九品寺に向かうのですが、なんと雨がいっそう強く降ってきてしまいました。風も強く、傘があおられます。
進むことも引き返すこともできず、道標の後ろに写っている白い建物の小さなひさしの下に逃げ込みました。建物が葛城山から吹き下ろす風をさえぎってくれたので、10分ほど、雨宿りさせてもらいました。
ここから九品寺まで1.2キロ。雨の中歩いたら25分くらいかかりそうです。坂を少し登った「猿目橋」バス停までは200メートル、目と鼻の先です。
とりあえず「猿目橋」バス停まで行って、御所駅に引き返すバスがあるかどうか、見てみることにしました。
猿目橋バス停
バス停に人はおらず、工事車両が2.3台止まっていました。
奈良県が整備に力を入れているウォークルート「奈良盆地周遊ウォークルート」の「葛城古道パート」の案内板がありました。英語の案内もあり。
近鉄御所駅方面へのバスがあるかどうか…。
バスはなし。やはり1時間に1本でした。
このまま御所駅まで歩いても30分かかります。九品寺へも30分。それなら当初の目的通り九品寺を目指そう。そう決めて歩きはじめました。
葛城山にはまだ雨雲がしっかりかかっています。が、北のほうが少し明るくなりはじめていて、雨も少しおさまってきていました。
九品寺道・奇跡の一期一会
小高い丘のあたりが九品寺でしょうか。
エイリアンとの遭遇・その正体は?
道路を横断し、真ん中の幅1メートルほどの道を登っていく途中のことです。
今、思い出しても鳥肌が立つのですが、あざやかな緑色の、1メートルほどの「物体」が右から左に横切っていくのが見えました。
ぴょーん、ぴょーん、ぴょーんと3回ジャンプしながら目の前を、横切って飛んでいったのです。
「えっ?今の何?」と自分で何を見たのか、わかりませんでした。
エイリアンが目の前を横切っていった!
そう思いましたもん(笑)。カンガルーのようにぴょんぴょん飛んでいきました。
胴体から足はあざやかな緑、そして顔はあざやかな赤。わたしの頭の中の「メモリーバンク」がガーッと動いて、「今の……もしかしたらキジ?」と思い当たりました。
ヤツは茂みからぴょーんぴょーんぴょーん、と長いストロークで3回ジャンプしてもう一方の茂みに飛び込んでいきました。カメラを構える時間もなかったです。
しばらく、キジ(であろう生き物)が消えていった茂みのあたりをにらんでいたのですが、再び姿をあらわすことはありませんでした。
「わたし、キジを見た!?」とすっかり興奮状態。小躍りしていたかもしれません(笑)。
生まれて初めて、(多分野生の)キジを見た感動と驚き。雨に降られ、風にあおられ、服にも靴にも水がしみてちょっと惨めな姿で葛城古道を歩いて……。
そんな日に、そんなときに出会った奇跡です。あの時、引き返していたら出会うことはなかった……。まさに一期一会、奇跡の遭遇でした。
頑張って歩いてきてよかった!もう少し頑張ってみよう!心なしか雨も小降りに…。やんでくれないかなあ。
番水の時計(ばんみずのとけい)
前回の葛城古道歩きでは見逃してしまった「番水(ばんみず)の時計」。今回は見つけることができるかなあ。
道標に「番水の時計」がありました。
発見!
田畑に送る用水路の水を公平に管理するために設けられたもので、当番の方がこの時計に合わせて配水を調整する慣行だそうです。
近鉄御所駅を出発してからここまで1時間10分かかったと教えてくれました。
ソーラーパネルが目印になりそうですね。
このあたり、秋には彼岸花が咲き乱れる撮影スポットらしいです。眺めもいいし、見晴らしもいいし、おすすめスポットです。
駒形大重神社(こまがたおおしげ じんじゃ)
「番水の時計」から目と鼻の先にある「駒形大重神社」に寄っていきます。
前回は鳥居の前を通っただけでしたが、今日は本殿まで登ってみることにしました。雨もポツリポツリ程度になってきました。
「駒形神社」と「大重神社」が明治後期に合祀され「駒形大重神社」となりました。
名前に「駒形」(馬)がつくので参拝者も馬関係の人が多いそう。
拝殿は最近改修されたようで、白壁も美しく、柱も磨かれていました。お参りはわたし1人。
ひっそりと木々に埋まっているような本殿。お手洗いの案内板がちょっと無粋かも(笑)。
手前はお焚き上げなどの祭祀を行う場所でしょうか。
この神社の周囲には小さな池がいくつか点在していて、静けさの中、水鳥の羽ばたきが何度も聞こえました。「深いところに踏み込んだ」感じがして、ちょっとこわいような雰囲気。1人だったせいかもしれません…。
帰りはこのカエルさんに見送られて、駒形大重神社を後にしました。
九品寺道
九品寺は駒形大重神社からは500メートルほどの距離。いよいよ近づいてきました。
これは灯籠だと思うのですが、変わったかたちですね。人が両手を広げているように見えます。真ん中の丸い穴は火袋(ロウソクを置くところ)じゃないかなあ。前衛彫刻のようです。おもしろい。
九品寺ひとり散策
ようやく九品寺に到着!嬉しすぎる。
山門周辺
前回はこの山門の写真を撮ったところで、カメラのバッテリーが切れてしまったのでした。今日はしっかり撮影していきます。
本堂
九品寺では1994年〜1996年にかけて、大規模な改修工事がおこなわれました。本堂、庫裡、地蔵堂、鐘楼など、品格ある風情を湛えています。
裏山へ
千体石仏群はこの本堂の裏手山にあります。
九品寺を開いた奈良時代の僧、行基。境内に像がありました。
千体石仏は本堂の裏山にあります。本堂の屋根を見下ろしながら登っていくと、赤い前掛けをした小さな石仏が見え始めます。
千体石仏との会話
この石仏の一体一体にはそれぞれに縁故の人がいて、それぞれの祈りや願いをこめて赤い前掛けを結び、手を合わせてきたのだと思うと、自然と頭が下がってきます。
石仏群を横に見ながらさらに登っていきます。ここでもお参りはわたし1人。ちょっと心細かった……。
どうやら裏山の頂上あたりまで登ってきたようです。手を合わせて帰ります。
山を降りてくる頃には、雨はすっかりやんでいました。静かな境内に自分ひとり、という貴重な時間でした。
桜の古木
最後に山門の左右にある2本の桜の巨樹を紹介します。
山門と向かい合って左側にある桜です。
枝の広がりが7・8メートルはある大木です。こんな風に枝を四方八方に広げるつくり、千手観音のように見せる意図があるのかな、と思いました。
この桜が満開になったらどんなに見事でしょう。いつか桜の季節に来てみよう。心に誓って九品寺を後にしました。
帰りルート・楢原地区から国道24号線まで下る
雨は上がり、空も明るくなっていたので、帰りの歩きは楽になりました。
風もなく、「嵐の後」の静けさでした。九品寺のある楢原地区を東に下り、国道24号線を目指します。近鉄御所駅は24号線沿いにあります。
雨の後で川は濁っていますが、水量はさほど増えていませんでした。
鴨都波神社に寄ってみた
国道24号線に出ました。バスはなかったので、国道沿いを北に歩いて近鉄御所駅を目指します。
途中、「鴨都波神社」の鳥居が見えてきました。ちょっと立ち寄ってみます。
道路を挟んで向かい側には御所警察署があります。
非常に格式の高い神社で、全国の「鴨社・加茂」の源である、と書かれています。
ムクロジの木には実がなります。直径1センチ余りの実で、皮をむくと真っ黒な種が1つ。これが羽つきの羽の黒い玉として使われているそうなんです。
神農薬祖神とは「神農(しんのう)さん」と呼ばれる「薬の神様」です。商売の神様、農業の神様でもあります。
御所市はお薬の「配置販売業」が盛んだったところです。いわゆる、「おきぐすり」ですね。家庭に常備薬をセットした救急箱などを置いて、使った薬の代金を後でいただく、というシステム。
「富山の薬売り」が有名ですね。こちらは「大和の薬売り」です。御所市と隣の高取町がその中心地で、今も家庭配置薬を扱う会社がありますし、製薬会社もあります。
御所市には奈良県の「薬事研究センター」もあり、「薬用植物見本園」も併設されています。なので「神農さん」とは縁が深いのかな、と思います。
鴨都波神社は夏(7月)と秋(10月)のススキ提灯祭りが有名です。
6月30日には夏越大祓があり、「茅の輪くぐり」も行われます。茅(かや)で編んだ数メートルの輪を作法通りにくぐり、夏の間の無病息災を願う神事で、奈良県では6月にあちこちの神社で行われます。
前半は土砂降りの葛城古道、九品寺再訪でした。
思いがけない「キジとの遭遇」は、わたしの「古道歩きログ」にしっかりと刻み込まれました。ぴょん・ぴょん・ぴょんと3度ジャンプしたキジの鮮やかな赤と緑が今でも眼に浮かびます。
雨の中、ちょっとゴリ押し気味に出かけたのですが、梅雨や台風シーズン、みなさまは無理しないように気をつけてくださいませね。