春まだ浅い山の辺の道を歩く

山の辺の道・桧原神社への道
ミチコ

こんにちわ!ミチコです。

今日は、昨年(2020年)3月に歩いた奈良県の古道、「山の辺の道」の様子をお届けします。

コロナ禍でのハイキング

昨年1月末、奈良県で国内初めての新型コロナウィルスの感染者が確認されました。以後、2月・3月と奈良県は警戒を強め、県内各地で人が集まるような行事やイベントが中止になっていきました。

「山の辺の道」沿いの神社やお寺でも、大きな行事は中止か縮小して行われるというお知らせが貼り出されていました。

平等寺護摩会は関係者のみ
平等寺護摩会は関係者のみで行われることに
大和神社のお渡りは中止に
大和神社のお渡りは中止になりました

新型コロナウィルスの影響で、今年もまたお花見もままならない春になりそうですが、少しだけ、山の辺の道の花々をお届けします。

JRと近鉄が乗り入れる「桜井駅」からスタート

桜井駅はJR西日本の桜井線(万葉まほろば線)と近鉄大阪線が乗り入れる接続駅です。JRが南側、近鉄が北側に位置します。

※「山の辺の道」は近鉄駅北口を出たところからスタートします。

近鉄桜井駅1階の観光案内所
近鉄桜井駅の観光案内所。ウォーキングマップをもらえます。

駅前は広いロータリーになっています。真ん中の太い道を行きます。

山の辺の道ガイドボード
山の辺の道への案内板
山の辺の道・石標
石標での案内もあります

歩き始めて1分。右手奥にモノトーンの都会的なビルが見えてきて、「こんなおしゃれなビル、あったかな」と思わず撮影しました。あとで調べてみたらオープンしたばかりのホテルでした。

ホテルルートイン桜井駅前
モノトーンの大きなビルは1月にオープンした「ホテルルートイン桜井駅前」

駅前の道をまっすぐに進んでいきます。信号や四ツ角には「山の辺の道」の道標があるので迷うことはありません。

スーパーマーケット
スーパーセンター「TRIAL」

大きな交差点に出ました。ディスカウントストア「トライアル」が目印です。白い建物の背後にこんもりと見えるのが「三輪山」ですね。

このあたりの地名は「粟殿」とあります。あわどの?バス停の表示は Odono 。どうやら「おおどの」と読むみたい。「奈良県あるある」の難読地名ですね。

歩くにつれ、三輪山がどんどん近くなっていきます。

大和川堤防と大向井橋
大和川堤防。金網フェンス越しに見えているのは「大向寺橋」(だいこうじばし)です。

このまま「大向寺橋」(だいこうじばし)を渡ってもいいのですが、今日はもう一つ先の「馬井出橋」(うまいでばし)を渡ります。100メートルほど上流にあります。

大和川たもとの白木蓮
大和川たもとの白木蓮。
海石榴市への案内板
「海石榴市」(つばいち)への案内板

日本最古の交易市といわれる「海石榴市」(つばいち)の案内板があります。背後に見えているのが馬井出橋(うまいでばし)。

馬井出橋
「うまいでばし」

桜井駅からここまで15分くらい歩きました。さあ橋を渡っていきましょう!

大和川堤防の桜並木

大和川桜のつぼみ
桜はまだかたいつぼみでした。右下に写っている黒い石が「仏教伝来の地碑」なんです。
大和川桜並木の公園
大和川沿いの桜並木

ぼんぼりも飾られ、開花を待つばかりの桜並木。満開の時には見事な桜のアーチが見られそうです。

金屋の石仏でウグイスの声を聞く

きれいに舗装された海石榴市の町を歩いていきます。

サンシュユの黄色い花
山茱萸(サンシュユ)の黄色い花が満開でした。

サンシュユは、秋に実る赤い実が生薬として利用されます。

海石榴市観音堂道標
海石榴市観音堂は100メートルほど脇道を入ったところ。今日は寄らずに行きます。
金屋石仏
金屋の石仏。二体の石仏が左のお堂におさめられています

金谷の石仏に来ました。白い「ユキヤナギ」が風に揺れています。ここも桜はまだツボミ。5メートル以上の大木なので、これまた満開時には見事でしょうね。

ウグイスが啼いていました。

このあたりからいよいよ「山のすそ」を歩く感じになります。自然の気配というか、山の匂いがしてきます。

三輪山平等寺から最強のパワースポット「大神神社」へ

平等寺赤門
平等寺の赤門が見えてきました。

平等寺のエドヒガンザクラ

大神神社の神宮寺である三輪山平等寺。美しく手入れされた境内にエドヒガンザクラが咲いていました。

平等寺太子像トエドヒガンザクラ
平等寺を開いた聖徳太子像とエドヒガンンザクラ。

ちょうど彼岸(春分の日前後)の時期に咲くのでヒガンザクラというのですね。

平等寺境内
平等寺境内。

写真の下あたりに写っているお地蔵さまは「熱とり地蔵」と呼ばれています。南北朝時代、大和の国の熱病がおさまるようにという願いを込めて掘られた地蔵尊だそうです。

コロナ禍の今、身につまされる謂われです。

大神神社(おおみわじんじゃ)参拝

平等寺から大神神社まではほんの数分です。

山の辺の道は大神神社の拝殿のすぐ右側に通じています。通常の参道を通らずにいきなり拝殿横に出るので、初めての方はびっくりされると思います。

手水舎の消毒液
手水舎の手指消毒液。

手水舎では手洗いの水は流しておらず、ひしゃくも出ていません。かわりに消毒用アルコールが置かれていました。

桜井駅からここまで、人に会うこともなく歩いてきたのでマスクをしていませんでしたが、ここで持参のマスクを装着し、手指消毒しました。

大神神社拝殿
大神神社拝殿。

いつもより参拝者は少ないようです。皆、マスクをされていました。「コロナウィルスがはやくおさまりますように」とお参り。

大神神社での婚礼
結婚式が行われていました。

狭井神社から大美和の杜へ

狭井神社への道
狭井(さい)神社へ続く「くすり道」。

大神神社摂社である狭井神社へ向かいます。病気を鎮めるパワーがあるという狭井神社の神様。ぜひお参りしておきたいです。

大美和の杜展望台への道
途中の分かれ道・久延彦神社・大美和の杜展望台へ続きます。

狭井神社の鳥居前に分かれ道があります。久延彦神社や「大美和の杜(おおみわのもり)展望台」へ続く道です。こんもりとした丘全体に枝垂れ桜などが植えられ、満開時には一大撮影スポットになっています。

狭井神社(さいじんじゃ)

狭井神社は本社である大神神社の荒魂をおまつりしているため、神威強く、病気などを癒やすと信仰を集めています。

拝殿の左奥には井戸があり、「薬水」(くすりみず)と呼ばれる三輪山の神水をいただけるようになっています。ペットボトルや水筒に神水を汲み、持ち帰ることができます。

狭井神社拝殿
狭井神社拝殿。

ここでも「コロナウィルスがはやくおさまりますように」とお祈りしました。

狭井神社は三輪山の登拝の起点になっており、拝殿の右側に入山の受付窓口があります。入山口もすぐ右横です。

「最強のパワースポット」と言われる三輪山は、山自体が大神神社のご神体であり、神聖な場所です。わたしはまだ登ったことがないのですが、気力・体力をを高めていつか参拝したいと思っています。

大美和の杜の早咲きの桜を見に行く

「山の辺の道」本道に戻る前に、ちょっと脇道に入り、「大美和の杜」(おおみわのもり)を見ていきます。ささゆり園の隣にある小さな公園のようなところです。

早咲きの桜
大美和の杜・早咲の桜が揺れています。
大美和の杜枝垂れ桜
枝垂れ桜はちらほら咲き。

花には少し早かったですが、見事な枝垂れ桜の枝ぶりを見ることができました。満開を想像してみます。

「山の辺の道」本道にもどり、玄賓庵(げんぴあん)を目指します。枯れたように見えるのはすべて柿の木。

八大竜王弁財天。桜並木の向こうには池があり、取り囲むように桜・紅葉が植えられています。

田起こし
田起こし風景。トラクターの運転手さんもマスクをされていました。
玄賓庵
玄賓庵の木々の陰影。

玄賓庵(げんぴあん)の木々が見えてきました。

玄賓庵の庭
玄賓庵の庭。

玄賓庵では厳冬期、見学者やハイカーが暖を取れるように、庵の休憩スペースで薪ストーブを焚いてくださってます。屋根のあるところ、少し煙が出ているの、わかるといいのですが。
今日はお邪魔せず、庵の脇を通り過ぎます。

古道の風景が現れます。

玄賓庵を過ぎると、少しだけ登りの道が続きます。いかにも山の辺らしい、陰影ある静かな道です。

檜原神社の澄んだ空気に浄められる

玄賓庵から10分ほどで檜原神社(ひばらじんじゃ)に到着します。

檜原神社拝殿
檜原神社拝殿。特徴的な三ツ鳥居。

JR桜井駅を出てから1時間30分。上天気だったので、汗がじんわりにじんでいました。境内のベンチで少し休憩です。

檜原神社から二上山を望む
檜原神社鳥居からはるか二上山を望む。

年2回、春分の日と秋分の日に二上山のド真ん中に夕日が沈んでいく情景が見られます。

ミチコ

水分補給しながら、携帯食の「ビスコ」を食べました。

お腹も少し満たされたので、出発!

檜原神社から青垣へ
檜原神社を出て箸中へ

檜原神社を出ると、「あれ?なんかいつもと違うぞ」と景色に違和感を感じました。

「道が赤い」歩き始めて気づきました。以前はグレーの砂利道だったのが、すっかり舗装されているではありませんか!赤っぽい、水はけのよい道になっています。うれしいやら、寂しいやら。砂利道がなつかしかったりします。変わってほしくないなあ、という余所者の勝手な願いですね…。

三叉路
クロスロード・笠荒神へ登る道。

ヘアピンカーブで下っていくのが山の辺の道です。登りの道は「笠山荒神」に通じています。「笠そば処」があり、地元産のそば100%のそばメニューで人気です。

無人販売
山の辺の道名物・無人販売所
箸中桜
箸中(はしなか)の桜。
箸中の古民家と桜
箸中の古民家と桜
満開の馬酔木
馬酔木
ユキノシタ
満開のユキヤナギが風に揺れる
三輪山を望む山の辺の道
山の辺の道・三輪山を背景に

振り返るとお椀を伏せたような三輪山のこんもりとした姿が。山の辺の道を紹介するときによく出てくる風景ですね。

ヒガンザクラ満開
ヒガンザクラ満開

景行天皇陵・崇神天皇陵

景行天皇陵
景行天皇陵の杜が見えてきました。
渋谷古墳
別名:渋谷向山(しぶたにむこうやま)古墳。
無人販売所の野菜
無人販売所の野菜。
つくし
つくしもありました。
渋谷町と龍王山
ユキヤナギのむこうに見えるのは龍王山(標高586メートル)。
クロスロード
龍王山、景行天皇陵、崇神天皇陵へ続く三叉路。

右側の石畳の道を登ってきました。左の道は龍王山の登山道へ続きます。

休憩スポット
大和平野を望む休憩スポット。柿の木の下でお弁当。

道標のすぐ横にある見晴らし最高の休憩スポット。大和平野とその西側に連なる金剛山・葛城山・二上山が見渡せます。

崇神天皇陵
崇神天皇陵・参拝処へ下る道。

休憩スポットを過ぎると、すぐ崇神天皇陵(行燈山古墳)が見えてきます。坂道を下り、堀に沿っていくと参拝所があります。

行灯山池
櫛山古墳脇の池。わたしは定点観測をしていて、いつも決まった場所からこの池の写真を撮ります。

中間地点の天理トレイルセンターまであと10分ほど。

崇神天皇陵生け垣補修

崇神天皇陵の石垣の改修工事でいつもの道が通行止め。

工事中

左手の杜が天皇陵。

迂回路

迂回路を通っていきます。

天理市トレイルセンターの八重桜を偵察

景行天皇陵崇神天皇陵を経て、山の辺の道の中間点、「天理市トレイルセンター」に到着しました。

JR桜井駅を10時に出発、スタートから2時間30分かかりました。

トレイルセンターのユキノシタ
トレイルセンターへの階段。いつもなにかしらの花々が咲いています。

とても天気がよく、暑いくらいだったので、半袖で日光浴している人がいました(笑)。

トレイルセンター枝垂れ桜
枝垂れ桜はまだつぼみ。桜の下にテーブルと椅子が置かれています。開花時はファンタジー。

天理市トレイルセンターには枝垂れ桜と八重桜が植えられていて、見事な花を見せてくれます。今日はまだまだ桜には早かったようです。

トレイルセンターの八重桜
八重桜のつぼみも小さいです。

ひとり歩きのときはマスクを外していましたが、センター内ではマスク装着。

センター内にはレストラン「洋食Katsui 」があります。売店ではお弁当やサンドイッチも販売されているので、昼ごはんを持参しなくても大丈夫ですよ。

わたしは節約派。昼ごはんは持参のおにぎりで簡単に。人がいない外のテラスのベンチですませました。

30分休憩し、トイレもすませて、すっかりリフレッシュしました。

ゴールの石上神宮、さらにJR天理駅を目指して出発します。

後半は:
萱生町 ⇒ 竹之内環濠集落 ⇒ 夜都伎神社(やつぎじんじゃ) ⇒ 天理観光農園 ⇒ 峠越え ⇒ 内山永久寺跡 ⇒ 石上神宮(いそのかみじんぐう)とチェックポイントが続きます。

天理市萱生町から竹之内環濠集落へ

天理市に入ると柿の木が一気に増えます。特に萱生(かよう)町は刀根早生(とねわせ)という品種の発祥の地、道の左右に柿畑が広がります。が、今は柿の木もご覧の通り。秋まで待ちましょう!

柿畑
柿の木。造形がおもしろいです。
龍王山
龍王山を右手に見ながら。
念仏寺六地蔵
念仏寺の六地蔵。

ずいぶん背の高いお地蔵さんです。ここから数十メートル、念仏寺の墓地の中の道を抜けていくので、ちょっと気後れするかもしれません。

白木蓮の大木
白木蓮の大木。おびただしい花数ですね。
西山塚古墳
西山塚古墳に出ました。
萱生町菜の花
萱生町菜の花畑。

このあたりは、まっすぐなアスファルトの道が続きます。ちょっとダレるのですが、眺めは最高です。大和平野を見渡せる広々とした遠景と、菜の花の近景。撮影スポットになっています。

すももの花
すももの花が満開。

梅や桜はあまり見られなかったけれど、この満開の白い花が最高でした。何かの果樹だと思うのですが、名前がわかりませんでした。帰宅後、画像を調べてみたらおそらく「すもも」じゃないかなと結論。どなたかご存じの方いらっしゃいますか?

イチゴ
露地栽培のイチゴが色づいています。
せんぎりや
「せんぎりや」さん。切り干し大根最高です!

萱生町(かようちょう)を抜け、乙木町(おつぎちょう)に入りました。

夜都伎神社(やつぎじんじゃ)の桜

夜都伎神社
夜都伎神社。

木々に覆われ、こんもりとした森になっています。この鳥居のかたわらには梅、桜、楓が植えられ、四季の色を添えてくれます。

夜都伎神社を過ぎると、ゆるやかながら、長い登りがずっと続きます。ちょっと足にくるかも。

天理観光農園
天理観光農園。季節のフルーツジュースあり。

観光農園の横を通っていくのですが、いよいよきつい登りになってきます。

石畳の道
石畳の登り坂。最後の難関。

小さな峠を越えていく感じです。実際には7・8分ほどの登りですがキツイ。最後の登りです。頑張れー!

内山永久寺跡(うちやまえいきゅうじあと)

坂を登りきり、柿畑の間を抜けると、一気に「下界に降りた」感じがして視界がひらけます。そこが「内山永久寺跡」。かつては栄華を誇った寺ですが、明治時代の廃仏毀釈のときに徹底的に破壊され、残っているのは本堂池のみ、という凄惨さ。

内山永久寺跡
内山永久寺跡。かつての伽藍図がその大きさを物語るのみ。
芭蕉句碑
芭蕉の句碑があります。

「うち山や とざましらずの花ざかり」。昔から桜の名所であったようですね。

本池
内山永久寺本堂池。

池の周囲には桜が植えられています。開花時が楽しみです。

石上神宮からJR天理駅へ

内山永久寺跡からゴールの石上神宮までは10分ほど。平坦な道がありがたいです。

石上神宮

日本最古の神社のひとつである石上神宮(いそのかみじんぐう)。物部氏の氏神とされているので、1500年以上も前からここにあったようですね。風格ある神社です。

石上神宮拝殿
国宝の石上神宮拝殿。

石上神宮に伝わる儀式祭礼の剣「七支刀(しちしとう)」。その剣を模したお守りが「御神劔守(ごしんけんまもり)」です。起死回生の力を与えてくれると言われ、人気があります。それがこちら!

石上神宮の御神劔守
御神劔守・表
石上神宮の御神劔守
御神劔守・裏

色は朱と黒があり、日本一カッコイイお守りとして知られています。凛々しいです。

ミチコ

ミチコは両方持ってます。

帰途・満開の河津桜に出会う

お参りも済ませたので、大急ぎでJR天理駅を目指します。帰りの電車が迫っていました。万葉まほろば線は1時間に1本という運行。1本逃せばホームで延々待ち、という「JRローカル線あるある」は避けたいです。

早足で急ぐなか、天理本通りの少し手前で、この鮮やかな桜に出くわしました!

河津桜
河津桜満開!

満開の河津桜です!見事です。さかんにシャッターを切っているカメラマンがいました。

もっとゆっくり見たかったのですが、2・3枚だけ撮影しました。電車の時間が迫っていたため、必死で商店街を速歩き。と、今度はこの景色が飛び込んできました。

天理本通河津桜
天理本通河津桜。

あざやかな、河津桜の並木。「天理よろづ相談所病院」に続く道です。ソメイヨシノよりもピンクが濃くて華麗な色。この時期、この道を歩いたから出会えた河津桜でした。

山の辺の道は花の道でもあるなあと感動。本当にきれいでした。ゆっくり見たかったー。

ミチコのまとめ

天理の石上神宮、桜井の大神神社。2つのパワースポットを軸に、小さな寺社や古墳群、遺跡、遺構などがあちこちに散らばる山の辺の道。気がつくと「ここにも」「あそこにも」古墳がある。「山の辺の道」はそんな道です。

地味なのですが、一つ一つの歴史を知るにつれ、「おもしろいやん」となる不思議な道。

コロナ禍の今、なかなか外出もできませんが、落ち着いたらぜひ歩きにきてくださいませ。